ヘソの緒
私が六年生になったとき、お母さんが「あなたにとって、とっても大切なものを見せてあげる」そういって引き出しの中から小さな箱を取り出した。
ふたを開けてみると、ブタのしっぽみたいな物が入っていた。
「これ、何?」「あなたの、ヘソの緒よ」
「えっ、私の!ヘソの緒!」私はとてもビックリした。
お母さんは、「乾いてしまって小さくなったけど、あなたと私は、このヘソの緒でむすびついていたのよ!」と教えてくれた。
私がまだお母さんのおなかの中にいるとき、このヘソの緒をとおして、栄養分や酸素をもらっていたんだって。
そんなこと信じられないくらい、小さくて乾いているヘソの緒!
このヘソの緒で、私とお母さんは結ばれていたんだ。それで私は生きてたんだ。このヘソの緒がなかったら、私は生きていられなかったのだ。そう思ったら、これはとっても大切なものなんだと思われてきた。「ヘソの緒取っておいてくれてありがとう。お母さん!」私はそう言った。 |
はじめのうちはお母さんの血。だって、はじめは赤ちゃん小さくて、血なんかつくれないでしょ。少し大きくなってから、赤ちゃんの血になる。 |
ぼくの考えは一つです。それは、お母さんの血と赤ちゃんの血は、まじりあうのです。だから、血がつながるというのです。血液型がちがっていても固まらないのです。ヘソの緒の中は、それほど不思議なのです。 |
私、お腹がすくと、お母さんのおなかを足で「ぽん」とけとばしたの。そうすると、お母さんはあわてて私に栄養分を送ってくれたの。栄養分は血ではこばれたの。だから、ヘソの緒の中を流れる血は、お母さんの血! |
お母さんの血は、おヘソのまん中へんまで。赤ちゃんの血は、そこからタッチして、酸素や栄養分をはこぶ。まん中へんに境界線があると思う。 |
行きのとき、ヘソの緒をとおる前は、お母さんの血。ヘソの緒を通っているとき、どちらのでもなく、通った後は赤ちゃんの血になる。帰りは、通る前は赤ちゃんの血。通っているとき、どちらのでもなく、通った後はお母さんの血になる。だから、ヘソの緒の血は、どちらのものでもない。 |