野球部日誌より
野球部の生徒には、毎日日誌を付けることを義務づけていた。
月曜日の朝に、私のところへ持ってくる。一日かけてその日誌を読み、気付きなどを赤のボールペンで書くのだが、これが意外に大変である。
ある時横着をして見たという印に、マルして返したら、次の週に内田君という部員が、月曜日のところにこんなことを書いてきた。
祖父よりこんな話を聞いた。
「わしが石工師になりたてのころ、仕事は何もさせてもらえなかった。3年ほど経った時、石の仏を作ってくれという注文がきた。
その時先輩の人たちは、別の仕事を持っていて忙しく、この仏を作ることがわしにまわってきた。
わしは三日間、寝ずに仏様を作ることに集中した。仏が出来て、注文主に渡す日がきた。
注文主は、わしにポケットからくしゃくしゃのお札を出し、ポイとわしに投げて渡した。これを見て、わしはノミで仏さんをぶち壊してしまった。」
これ以後、野球部日誌を見る姿勢が変わった、特に内田君のは…
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