▼ 講義のノートを仲間にとってもらう。すると大学がその仲間に代筆料を払ってくれる。
とんでもない話しだ、と思うかもしれない。
だが目や耳が不自由で、ノートを十分にとれない学生のための代筆だとすれば、受け取り方は一変するだろう。
▼ 香川県の四国学院大学は、六月からこの制度を始めた。代筆を頼みたい、と名乗り出た学生は十人。
ほとんど聴覚に障害があって、講義をよく聞き取れない。これに三十六人が「請け負おう」と手を挙げた。九〇分の講義に大学は九百円を払う。
自分が履修する科目で他人の代筆をすることは、勉強を妨げるので認めない。
▼ 四国学院は身体障害者を特別枠で受け入れている。これまでは必要があると、個人的に友人に頼んでいた。
だが、「自分のために友人が犠牲になっているのではないか」といった気兼ねがあった。
そこで、制度を設けることにした。とりあえず一年間様子をみて、さらにいい方法を考える。
▼ 支援にきちんと報酬を払う大学はほかにある。札幌の北星学園大学では、同時に二人で交代しながらノートをとる。
これに手話通訳者も交えて、一度に四人で一人を支えることもある。支援を受ける聴覚障害の学生はいま二人だ。
東京のルーテル学院大学は、手話通訳の専門家を一人の学生につけている。
▼ やはり東京の日本社会事業大学では、本人が学内で気心の知れた代筆者を探し、報酬は学校が払う。
いま二人が制度を利用する。筑波大学では十年以上前から、朗読や代筆、それに資料集めや移動の手助けなど、多彩な介助が対象になっている。
▼ ほかにもまだあるだろう。これらの制度は希望すれば支援を受けられるのが原則だ。勉強に熱心な、体の不自由な学生にも同じ学ぶ環境を整える。
それだけでなく、周りにいる学生は当然、その環境づくりに参加する。制度は両方の大切さを問うている。
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