タッチの差
529人のお客を乗せたジェット機は大阪空港へのファイナル・アプローチに入り、高度はわずか210メートル。数秒で滑走路にタッチ、と思った瞬間に一転して機首を引き揚げ、ふたたび上空へ飛び去った。日航機、午後9時02のゴー・アラウンド。
この「2分」というところが問題で、羽田発大阪行きの最終便がまさしく「タッチの差」で門限を120秒越えたため着陸を断念、えっちらおっちら羽田へ引き返したと言うドラマである。
とかく「午後9時を過ぎて離着陸はしない」というのは爆音に悩む周辺住民の切なる願いから生まれた大阪空港使用上のルールなのだ。
その夜、日航最終便は天気の急変で出発が55分も遅れ、9時までにすべり込めるかどうかという状況下にあった。途中、レーダーの監視を受けつつ直線的なコースで大坂をめざしたが、努力のかいなく最後のところで時間切れ。滑走路にまさに触れようとするところまで降りていながらルールを「守り抜いた」のは航空界のカガミというべき姿勢である。
そして、その秒読み段階でとして着陸を拒否した大阪航空事務所(という役所)」の役所精神もあっぱれなものである。
(毎日新聞
今日のノートより)
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